平成24年11月6日(火) |
岐路に立つ「9・16反日大暴動」以後の日中関係 |
天児慧先生
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授
中国の領有権主張は、1968年に国連調査団が「尖閣諸島海域に石油の大量埋蔵の可能性あり」と発表したあとの1971年ごろからである。日本国は、1895年に「無主地」であることを確認し、国際法の手続に則って自国領土に編入した。したがって、中国が76年間も領有主張をしてこなかったのはおかしい。また、『人民日報』1953年1月8日号が、「尖閣は琉球諸島」と認めた記事も存在する。中国の意図は、資源確保と同時に、尖閣領有宣言で琉球列島迄のいわゆる第一列島線への足掛かりを築くこと、台湾との共同歩調をとることで中台統一を狙う、ナショナリズムを煽って国内の不平分子のガス抜きを図ることなどがある。その折、9月11日に日本国が国有化を宣言したことから、主席交代を目前にした胡錦濤は強硬発言をし、官製デモを煽り、それが9・16反日大暴動へ発展した。しかし、逆に反政府デモ化する恐れや国際世論の反発を考え、大暴動は抑えたものの、反日不買運動などが続いている。
その経済的損失は、日中双方とも大きい。中国は代替品が沢山あるので堪えることができるが、日本からは沢山の企業が進出しているだけに、長引けば日本の損失の方が大きい。ここは落としどころが必要である。日本新政府は、国際世論を味方に付け、中国へ「国際法遵守と武力行使の否定」を主張する一方、「争いの棚上げ」「資源の共同開発」を提案する度量を示すことを提言したい、と述べられた。その後の意見交換も盛んでした。