平成27年6月10日(水) |
火山災害状況とその対策について! |
池谷浩先生
火山防災エキスパート、政策研究大学院大学元特任教授
火山はプレートとプレートの間にできる。たとえば北海道から東北、伊豆七島へとつづく火山の位置をなぞると、太平洋プレートの形とほぼ同一である。日本は太平洋プレート、フィリピン海プレート、アメリカプレート、ユーラシアプレートがぶつかりあう場所なので、火山が多いのだ。全国では、110もの火山が存在する。しかしそのおかげで、美しい景観があり、豊かな温泉があり、宏大な緩斜面では農業が行なえる。湧水、伏流水なども火山のおかげである。噴火による災害は何百年に1度のこと。火山を恨むのではなく、火山の恵みに感謝しながら、つきあって生きていくのだ、と考えたい。
噴出物の量が10億m3以上の大噴火は、17世紀には3回、18世紀には2回、19世紀には1回(磐梯山、1888年)、20世紀は1回(桜島、1914年)あった。1707年の富士山の噴火は、3〜10億m3レベルであり、1977年〜78年の有珠山、1990年〜95年の雲仙岳は1〜3億m3レベルであった。つまり近年の噴火は小規模なものであった。今世紀には、大規模な噴火が5〜6回起きると想定して準備を行なっておくべきである。
火山災害について説明する。噴石・火山灰などが思いつくが、注意したいのは、火砕流と土石流だ。
火砕流は、高温の火砕物(溶岩のかけらや火山灰など)とガス(水蒸気や空気)の混合体が流れ下る現象である。速度は最大で100m/秒。雲仙普賢岳の時で35m/秒であり、人が走っても逃げられない。
土石流は、長雨や集中豪雨などによって土砂などが一気に下流へと押し流されるものがだが、火山関連でも、噴火後、火山灰が積もった後の降雨によって発生する。災害としての発生可能性が最も高く、しかも継続して、広域かつ同時多発的に発生する。火山灰は粒子が細かく水を浸透させづらいため、少しの雨でも多量の水分を含み、山腹の斜面の境目から一気になだれ落ちるケースが多い。
噴火による災害は長期化することも大きな特徴である。十勝岳では約150日間(1988年12月16日〜89年5月初頭)、雲仙普賢岳では約1500日(1991年6月7日〜95年5月25日)、三宅島では4年半(2000年9月1日〜05年2月)にも及んでいる。
火山災害の対策は地域ごとに進められている。富士山の火山砂防事業では、富士山の周辺を近い順に第1次避難対象エリア〜第3次避難対象エリアに、さらに地域ごとにライン1〜17に分けて、それぞれの危険度に応じてアラートを出していく計画ができている。ハード面の対策として、溶岩流対策として導流堤、遊砂地工を設け、流域での流向制御や溶岩の一部補則により被害の軽減を図っている。融雪型火山泥流対策として、渓流保全工、導流工、遊砂地工、砂防堰堤工などを設け、主として流出土砂の捕捉と導流により被害の軽減を図っている。土石流対策として、渓流保全工、導流工、遊砂地工、砂防堰堤工を設け、流出土砂の捕捉と導流により被害の軽減を図っている。
雲仙普賢岳での新たな取り組みとして、(1)熱赤外線カメラを設置し、火口部を常に監視。(2)火砕流の雲成分を上空に逃がす世界初の火砕流防止フェンスを導入。(3)重機を無人でコントロールできるシステムを開発。さらに(4)人家の多い水無川の方へ土石流がいかないように導流堤をつくり、別ルートで土石流を流すようにした。また水無川と導流堤に挟まれた三角地帯の農地を約6mかさ上げしてさらに安全度を高めている。
よく聞かれるのは、富士山の噴火についてだが、現在は異常な数値ではない。したがってすぐに噴火することはないだろう。しかし、いつかは必ず噴火するので、対策は十分にしておきたい。
●ご案内状(pdf)