平成26年10月23日(木) |
TPP交渉の状況と日本の対応について
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馬田啓一先生
TPPの専門家、杏林大学総合政策学部・大学院国際協力研究科教授
TPP交渉については、11月にアメリカ中間選挙を控えているため、選挙後に何らかの進展があるとみられる。今、TPP交渉で難航しているのは、(1)物品市場アクセス(工業、繊維・医薬品、農業)、(2)知的財産権、(3)競争政策(国有企業規律)、(4)環境の分野である。日本にとって、(1)の問題が最も大きい。日本以外の参加国は最終的に100%関税自由化で合意しているが、日本は農産物5品目と自動車で関税維持を主張しているだけにむずかしい。しかし、グローバル企業が活躍する今、貿易ルールが各国で違うのは非効率的である。TPPは、日本企業にとって、減少する国内需要を補えるアジア太平洋地域の市場を押さえるチャンスである。TPPがまとまらなければ日本企業が海外へ流出してしまう。低関税輸入枠を拡大する、という方法を取れば、国内外に向けて公約違反はないことをアピールできるだろう。農業改革も進めなければならない。やる気のある農家に所得補償をし、輸出産業へと転換を進めるべきだ。
TPP交渉には、アメリカと中国の駆け引きが続いている。最終的にFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を目指している点は共通しているが、アメリカはTPPをベースにしたルールの厳しい(国営企業が参加できない)FTAAPを、中国はAPECを経由したルールの緩いFTAAPを目指している。11月のAPEC首脳会合では、こうした両国の綱引きが行われるであろう。
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