平成29年3月13日(月) |
米中もし戦わば! |
飯田将史先生
防衛省防衛研究所主任研究官
地球の歴史を振り返ると、新興大国と既存大国との緊張関係の70%以上が衝突してきた。避けるための方策は果たしてあるのか?中国にとってアヘン戦争から第二次大戦終結までの100年間は屈辱の期間で、これを繰り返さないためには軍拡しかないと考えている。台湾や尖閣はこの間に失った領土で、「回復する」という意識がある。南シナ海のシーレーン防衛は石油供給の目的で、海洋資源にも目が向いている。現状変更の意図があり、軍事的能力も向上しているため、紛争を引き起こす可能性が高まっている。これに対して米国の取る戦略は、軍事力だけでなく総合国力による封じ込めが重要になる。直接的な軍事行動は、戦争の長期化、核戦争の危険があるため得策ではない.オバマ政権は協調志向からスタートしたが、やがて幻滅し、軍事力の強化を目にしてからは周辺諸国との同盟を再強化したリバランス政策を目指した。トランプ政権になっても路線に大きな変動はないだろうが、「アメリカ人の雇用を奪い、貿易赤字を増やしている」と表立って非難しているところが最大の違いだ。習近平はこれに対し、アメリカが保護主義に走るのならば、とグローバル化、貿易自由化の旗手にならんとしている。海洋進出もますます推進していく方向で、党大会までは弱腰の発言はせず、経済・軍事両面で米中間の対立は一層深まっていくだろう。ただ、偶発的な衝突はあるかもしれないが、全面戦争はまずない。情報戦・サイバー戦はすでに始まっている。また、北朝鮮を使って日本にミサイルを撃ち込み、米軍基地についての国論を二分して日米同盟を分断しようとする動きも懸念される。
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